ドコモと Samsung が「ユーザー単位」の AI-RAN を実証|通信速度低下の予兆を AI で検知し、発生頻度を 13.1% から 7.2% へ(実験環境での実証・同社発表)【AI活用事例】
公開: 2026-11-06
この事例でわかること
- NTTドコモとサムスン電子が、AI でスマートフォンの通信速度低下を事前に予測し、低下する前により良好なネットワークへ接続を自動で切り替える技術を共同開発し、実証に成功したと発表(2026-08-10)
- 従来は 1 つの基地局(セル)につながる端末に同じ設定を当てていたが、本技術は利用者ごとに、移動傾向や利用中のサービスに合わせて最適化する
- AI は、端末から匿名で集めた過去の通信品質データ(MDT)と、利用者の移動傾向・利用サービスを分析し、動画の途切れなどにつながる速度低下の予兆を検知する
- 2026 年 1 月の日本国内の実験環境での実証で、通信速度低下の発生頻度を 13.1% から 7.2% へ 5.9 ポイント低減。英語版はシミュレーションと説明しており、商用導入の成果ではない
- 学べる型は、「問題が起きてから対処」ではなく「予兆で先に手を打つ」こと、そして平均ではなく一人ひとりの体験で品質を測ること(演習は Links-Create の研修用提案)
主な指標(一次ソース確認済み)
- 通信速度低下の発生頻度
- 13.1% → 7.2%(5.9 ポイント低減、実証での値)
- 実証の時期と場所
- 2026 年 1 月、日本国内の実験環境
NTTドコモ・サムスン電子の公式発表(日本語版 PDF 2026-08-10)の「2026年1月に日本国内の実験環境で行った実証では、本技術を用いることで、本技術を適用しない場合と比較して通信速度低下の発生頻度を13.1%から7.2%へ、5.9ポイント削減」に基づく。英語版の発表は、この実証をドコモの商用ネットワークとローカル 5G 試験フィールドで収集したデータに基づくシミュレーションと説明している(英語版の該当箇所の和訳)。商用サービスへの導入成果ではない。「5.9 ポイント」は割合の差であり、「5.9% 改善」ではない。対象の利用者数・期間・通信速度低下と判定するしきい値は非公表。
公式発表(日本語版)に基づく。英語版では、商用ネットワークとローカル 5G 試験フィールドのデータに基づくシミュレーションと記載(和訳)。実験環境の規模や、商用ネットワークへの導入時期は発表されていない。
一次ソース: https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/info/news_release/topics_260810_d1.pdf (公開: 2026-08-10)
要約
NTTドコモとサムスン電子(以下、Samsung)は、AI でスマートフォンの通信速度低下を事前に予測し、低下する前により良好な通信環境のネットワークへ自動で接続を切り替える技術を共同開発し、実証に成功したと発表しました(2026-08-10)。
公式発表から読み取れるポイントは次の 3 つです。
- 単位が「基地局」から「利用者」へ: 同じ基地局につながる全端末に同じ設定を当てるのではなく、利用者ごとに最適化する
- 「起きてから」ではなく「起きる前」: 品質が下がった後に切り替える従来のやり方に対し、AI が予兆を検知して先に切り替える
- 成果は実証の値: 2026 年 1 月の日本国内の実験環境での実証で、通信速度低下の発生頻度を 13.1% から 7.2% へ 5.9 ポイント低減(英語版ではシミュレーションと説明)
本記事は 両社の公式発表(日本語版 PDF)(2026-08-10)を一次ソースに、事実の整理と Links-Create の分析・研修用の演習を分けて解説します。演習は研修用の提案であり、ドコモや Samsung が実施した事実ではありません。
何が発表されたか(公式情報ベース)
発表主体はドコモと Samsung であり、数値も両社による発表値です。
技術の概要
| 項目 | 内容(公式発表の要約) |
|---|---|
| 開発 | NTTドコモとサムスン電子の共同開発 |
| 目的 | 通信速度低下を事前に予測し、低下する前により良好な通信環境のネットワークへ自動で切り替える |
| 最適化の単位 | 個々の利用者(同じ基地局の全端末に同じ設定を当てる従来方式と対比) |
| AI が使うデータ | 端末から匿名で集める過去の通信品質データ(MDT)、利用者の移動傾向、利用サービスの状況 |
| AI が行うこと | 動画の途切れや画質低下など、体感品質の低下につながる通信速度(スループット)低下の予兆を検知 |
| 切替の例 | 周波数帯など、サービスの要求を満たす最適な設定へ自動で切り替える(英語版の例示) |
| 実証 | 2026 年 1 月、日本国内の実験環境。英語版では商用ネットワークとローカル 5G 試験フィールドのデータに基づくシミュレーションと説明 |
| 結果 | 適用しない場合と比べ、通信速度低下の発生頻度を 13.1% から 7.2% へ(5.9 ポイント低減) |
背景: なぜ「起きる前」なのか
公式発表は、高画質動画・オンラインゲーム・ビデオ会議の普及で、いつでも安定した通信が求められていると説明しています。一方、従来のネットワーク制御は品質が低下した後に切り替えるのが一般的で、利用者が不便を感じる前に対処することが課題でした。
また、接続した時点では最適だったネットワークでも、利用者の移動や周辺エリアの混雑の変化で速度が落ちることがあるとしています。本技術は、この変化の予兆を AI で先に捉えることを狙っています。
「本技術は、AI 技術を活用してサービス品質の劣化を未然に防ぐ予兆型運用アプローチを実現することで、ユーザー体感品質の向上を図る先進的な取り組みです。」 — 出典: NTTドコモ・サムスン電子 公式発表(日本語版 PDF)(2026-08-10)
これは両社自身による位置づけであり、第三者の評価ではありません。
データを「全部集めない」工夫
両社は、AI による最適化に必要なデータを効率的に集める技術も検討しました。無線環境の情報を一律に大量収集するのではなく、利用者ごとに起きている速度低下などの課題に応じて必要な情報を選んで集めることで、ネットワークへの負荷を抑えるとしています。この予測技術と効率的なデータ収集技術は、移動通信の国際標準化団体 3GPP へ共同提案したと発表されています。
公式発表で開示されていない情報(推論で書かない)
- 実証の対象とした利用者数・端末数・期間、実験環境の規模
- 「通信速度低下」と判定するしきい値、予測の精度(見逃し・空振りの率)
- 使っている AI モデルの種類
- 商用ネットワークへの導入時期
- 切り替えによって他の利用者の通信品質に影響が出たかどうか
これらは公式情報がないため、本記事でも記載しません。
設計の読み解き(Links-Create による解説)
ここからは、公開情報から読み取れる設計上のポイントを Links-Create の視点で解説します。以下は独自分析であり、NTTドコモや Samsung の公式見解ではありません。
1. 「平均」ではなく「困った回数」で品質を測っている
成果の指標は、平均速度ではなく**「通信速度低下の発生頻度」**です。平均が上がっても、一部の利用者が頻繁に動画の途切れを経験していれば、体感は良くなりません。Samsung 側のコメント(英語版)でも、研究の焦点をセル全体の性能から個々の利用者へ移したと述べられています。
何を指標にするかで、AI に何を最適化させるかが決まります。自社で AI を評価するときも、「平均」と「困った件数」の両方を見ると、見落としが減ります。
2. 予測は「行動」とセットで価値が出る
速度低下を予測するだけでは、利用者の体験は変わりません。本技術は、予兆を検知したら接続先を自動で切り替えるという行動まで組み込んでいます。
| 段階 | 本技術での内容 | 一般の業務での例(解釈) |
|---|---|---|
| データを集める | MDT、移動傾向、利用サービス | 問い合わせ履歴、設備のセンサー値 |
| 予兆を見つける | 速度低下の予兆を AI が検知 | 解約・故障・クレームの兆し |
| 先に手を打つ | より良いネットワークへ自動切替 | 担当者への通知、点検の前倒し |
予測の精度だけを議論していると、「予測が当たっても何もしない」状態になりがちです。予測と打ち手を最初から一緒に設計することが大切です。
3. データは「必要な分だけ」集める
両社が、データを一律に大量収集せず、課題に応じて必要な情報を選んで集める方法を検討した点も重要です。AI のためにデータを集めること自体が、ネットワークに負荷をかけるからです。社内の AI 活用でも、「とりあえず全部集める」は保管・管理・個人情報の面でコストになります。
4. 既存の事例との違い
| 事例 | 最適化の単位・タイミング | 本事例との違い |
|---|---|---|
| KDDI の強化学習による基地局最適化 | 基地局のパラメーターを自律最適化(一部エリアに導入) | 基地局単位の最適化。本事例は利用者単位で、まだ実証段階 |
| NTTドコモのネットワーク保守 AI エージェント | 故障が起きた後の分析と対処案の提示(商用) | 起きた後の対応。本事例は起きる前の予兆検知 |
自社に置き換える演習(Links-Create の研修用の提案)
以下の演習と表の例は、Links-Create が研修用に提案するものです。ドコモや Samsung が実施した手順や事実ではありません。 表の「例」は架空の例です。
演習 1: 「起きてから対処」している問題を書き出す
| 問題の例(研修用の例) | 今の対処のタイミング | 予兆になりそうなデータ |
|---|---|---|
| 顧客の解約 | 解約の連絡を受けてから | 利用頻度の低下、問い合わせの増加 |
| 社内システムの遅延 | 社員からの苦情が来てから | 応答時間の推移、アクセス数 |
| 商品の欠品 | 棚が空いてから | 販売ペース、天気、イベント |
演習 2: 指標を「平均」と「困った件数」の 2 本立てにする
上の問題ごとに、平均値と「一定の基準を下回った件数」の 2 つの指標を決めます。たとえば「平均応答時間」と「応答に 5 秒以上かかった回数」です。基準の値は自社の業務に合わせて決めてください。
演習 3: 予兆を見つけたときの「打ち手」を先に決める
予兆を検知したら誰が何をするかを、予測の仕組みを作る前に決めます。打ち手が決まらない予兆は、検知しても使われません。生成 AI に過去のデータを渡して予兆の候補を挙げさせる練習は、身近なデータから始められます。
法人 AI 研修への示唆(Links-Create の視点)
- 指標が AI の目的を決める — 研修では、AI に何を最適化させるかを「どの指標で測るか」から議論する
- 予測と打ち手はセットで設計する — 予測の精度だけでなく、予測後の行動まで決める
- 実証値と商用値を区別する — 発表の数値が実験環境かシミュレーションか商用かを確かめてから使う
関連リソース
- 生成 AI(Claude Code)を実務で使う実装演習 — 生成 AI で何ができるかを体験する無料コース
- AI でデータ分析・情報収集をする方法 — 調べる・まとめる・気づくための AI の使い方
- AI エージェント入門ガイド — AI が判断して行動する仕組みの基本
- KDDI の強化学習による基地局最適化(AI活用事例) — 基地局単位で AI 最適化した事例
- NTTドコモのネットワーク保守 AI エージェント(AI活用事例) — 故障発生後の分析を AI エージェントが支援する事例
出典・引用ポリシー
本記事の事実情報は、次の公式発表を一次ソースとしています。
- 株式会社NTTドコモ・サムスン電子株式会社『ドコモと Samsung、AI で通信速度低下を予測し未然に防ぐ技術の実証に成功』(日本語版 PDF)(2026-08-10)
- NTT DOCOMO Press Release "DOCOMO & Samsung Electronics Achieves Successful Validation of User-level AI-RAN Technology"(英語版)(2026-08-10、実証条件の補足に使用)
設計の読み解き・演習・研修への示唆は Links-Create の独自分析・研修用の提案であり、NTTドコモおよびサムスン電子の公式見解ではなく、両社が実施した事実でもありません。定量値は公式発表の表現(実験環境・英語版ではシミュレーション・適用しない場合との比較)を維持し、商用導入の成果や成果保証としては記述していません。公式情報の更新があれば、本記事も追従して更新します。
関連する AI 研修コース・ガイド
この事例で見た AI 活用を、自社のエンジニア・実務者が手を動かして再現できる 実装演習とガイド記事です。Anthropic Academy の概念入門の次に位置する、 実装力定着のためのカリキュラムをご覧ください。
- バイブコーディング実践編 (vibe_practice)Claude Code を中心に「設計→実装→レビュー→テスト」を提出物付きで学ぶ 10 章 40 レッスン。全40レッスンを無料受講できます。
- AIエージェント活用実践編 (agent_practice)Claude Agent SDK と MCP で AI を働かせる実装。事例企業の AI エージェント活用を自社で再現したいエンジニア向け。
- AI研修 コース一覧概論レーンと実践レーンの全コース・レッスンを確認。
- AI 活用事例集に戻る他社の事例も含めて、業種・ユースケース・規模別に AI 導入実例を比較する。
- Anthropic Academy との違い概念入門 (Anthropic Academy) と実装力定着 (AI研修 LMS) の使い分けを解説。