AIエージェント活用実践編 / Workflow と Agent の使い分け — 何を自動化するかの判断
Anthropic 6パターン入門
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学習のねらい
AI を業務で活用したいとき、「どこまで自動化できるか」「どのようなシステムを構築すべきか」と迷うことがあります。 Anthropic は、LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)を使ったシステム設計を 6つのパターン に分類し、シンプルなものから複雑なものまで段階的に提示しています。 本レッスンでは、これらのパターンを理解し、自分の業務課題に当てはめられるように学びましょう。
Workflow と Agent の本質的な違い
AIシステムを設計する上で、まず理解したいのが Workflow(ワークフロー) と Agent(エージェント) の違いです。
- Workflow: あらかじめ決まった経路に沿って LLM とツールを動かす方式です。どのステップで何を処理するか、その順序が固定されています。例えば「翻訳してから要約する」といった、明確な手順があるタスクに適しています。
- Agent: LLM 自身が状況を判断し、次に取るべき行動や経路を動的に決めて動く方式です。まるで人間のように「考える → 行動する → 観察する」を繰り返しながらタスクを進めます。予測できない問題に対応したり、オープンエンドな(終わりが明確でない)タスクをこなしたりするのに向いています。
Anthropic が提唱する6つのパターン
Anthropic は、LLM を使ったシステムを以下の6つのパターンに分類しています。シンプルさから複雑さの順に見ていきましょう。
1. Prompt Chaining (プロンプト連鎖)
ある LLM 呼び出しの出力を、次の LLM 呼び出しの入力として使う、一直線のパイプラインです。
- ユースケース: 顧客からの問い合わせを「まず感情分析し、次に要約し、最後に適切な担当部署を提案する」といった、順序が決まった複数段階の処理に適しています。
- イメージ: 工場の組み立てラインのように、情報が次々と加工されていきます。
2. Routing (ルーティング)
入力された情報を分類し、その種類に応じて適切な後続の処理に振り分けるパターンです。
- ユースケース: 顧客からのメールを「返金」「技術サポート」「営業」といったカテゴリに分類し、それぞれ異なる専門の LLM やシステムに処理を任せる場合などです。
- イメージ: 交通整理のように、最適な道筋に誘導します。
3. Parallelization (並列化)
同じタスクの異なるバリエーションを並行して実行し、その結果を統合(Sectioning)したり、多数決で最も良いものを選ぶ(Voting)したりするパターンです。
- ユースケース: 複数の LLM に同じ質問を投げかけ、それぞれの回答を比較して最も信頼できる答えを選ぶ、あるいは、コードレビューで複数の観点から同時にフィードバックを得て集約する、といった場面で使えます。
- イメージ: 複数の専門家が同時に意見を出し合い、最終的な結論を導き出すようなものです。
4. Orchestrator-Workers (オーケストレーター・ワーカー)
中央の LLM(オーケストレーター)が複雑なタスクを動的に小さなサブタスクに分解し、それぞれのサブタスクを別の LLM(ワーカー)に委譲して実行させ、最終的に結果を統合するパターンです。
- ユースケース: 複雑な市場調査タスクを「競合分析」「顧客ニーズ調査」「トレンド分析」といったサブクエリに分解し、それぞれをワーカー LLM に調査させる、といった場合です。ワーカーは必要に応じて Tool Use(ツール使用) (LLM が外部関数、例えば検索エンジンや計算ツール、API 呼び出しなどを利用できる仕組み)を行うこともあります。
- イメージ: プロジェクトマネージャーが大きな仕事を小さなタスクに分け、チームメンバーに割り振って進めるようなものです。
5. Evaluator-Optimizer (評価者・最適化者)
1つの LLM がタスクの結果を生成し、別の LLM(評価者)がその結果を評価してフィードバックを提供します。生成 LLM はそのフィードバックを元に、結果を改善するループを繰り返します。
- ユースケース: 文章生成 LLM が記事を書き、別の LLM がその記事の品質や文体を評価し、改善点を指摘。元の LLM がそれを修正してより良い記事を作り出す、といった反復的な改善プロセスで利用されます。
- イメージ: 先生が生徒の宿題を採点し、生徒がそのフィードバックを受けて改善する、というサイクルに似ています。
6. Autonomous Agents (自律エージェント)
LLM が自ら計画を立て、実行し、その結果を観察して、次に何をすべきかを継続的に判断する自律的なループを持つパターンです。多くの場合、複雑な Tool Use を伴います。
- ユースケース: コーディング・エージェントが「このバグを修正する」という指示を受け、ファイルの読み込み、コードの変更、テストの実行、デバッグを自律的に繰り返す、といったオープンエンドなタスクに適しています。
- イメージ: 自分で目標を設定し、試行錯誤しながら達成していく研究者のようなものです。
まとめ
これらのパターンは、シンプルなものから始めて、必要に応じて複雑さを増していくという Anthropic の原則に基づいています。 まずは自分の課題がどのパターンに当てはまりそうか、考えてみましょう。